研究テーマ2:土壌構造と微生物多様性が生み出す創発特性の解明
Research Topic 2 2: Soil structural development and microbial diversity
土壌は、地球上でも有数の微生物多様性ホットスポットであり、微生物の働きによって有機物分解や養分循環が進みます。さらに、団粒構造による多孔質な空間が、水や酸素の動態を制御し、多様な微生物環境を生み出しています。しかし、こうした土壌構造や微生物多様性が、どのような仕組みで形成・維持されているのか、その多くは未だ謎です。私達は、物理・化学・微生物学を融合し、こうした土壌機能の創出機構の解明に挑戦しています。

具体的には、土壌団粒構造と機能の関係を、Top-downとBottom-upの両アプローチを用いて研究しています。Top-downアプローチでは、長い年月かけて形成された自然土壌を対象に、土壌構造を壊さず内部の物理構造や化学環境を調べたり、構造を段階的・体系的に解体して得られる各サブユニットを評価します。
Bottom-upアプローチでは、土壌を構成する材料(鉱物粒子や有機物)を実験的に混合・培養し、団粒構造の形成を評価します。どちらのアプローチにおいても重要だと考えているのが、「団粒構造の階層性/aggregate hierarchy」および団粒化に必須の「接着物質/binding agent」です。
私たちは、団粒構造の階層性はサブミクロンスケールまで拡張して捉えられることを証明し(Asano & Wagai, 2014, Geoderma)、またナノ・ミクロスケールで生じる有機物・鉱物・金属の相互作用が、どの様な仕組みでマクロスケールで観察される団粒構造形成に繋がるのかという根本的な問題に対し、初めて具体的なモデル(organo-metallic glue仮説)を提示することに成功しました(Wagai et al., 2020, SOIL)。土壌炭素貯留および土壌微生物生態とも密接に関係するこれらの研究は、世界的にも注目されています。

図.土壌団粒の階層構造の実体(アロフェン質黒ボク土Ap層の例)
(a) 最大分散処理によって得られた有機無機複合体(サブミクロ団粒)の電子顕微鏡画像
(b) 同じ粒子の炭素、鉄、カリウムの元素マッピング(KEK, BL13A, STXM-NEXAFS分析)From: Asano Wagai et al. (2018) DOI: 10.3390/soilsystems2020032
(c) 同じアロフェン質黒ボク土から得られた機械振とう耐性のミクロ団粒の電子顕微鏡画像 From: Wagai et al. (2015) DOI: 10.1016/j.geoderma.2014.11.028
(d) 同土壌から得られた耐水性マクロ団粒の電子顕微鏡画像 From: Asano & Wagai (2014) DOI: 10.1016/j.geoderma.2013.10.005
加えて、土壌で形成した数㎜~1cmサイズの団粒の微生物の多様性や棲み分けについての研究も進めています。具体的には、強力な温室効果ガスであり農地が最大の発生源であるN2OをN2に還元する能力を持つ微生物に焦点をあて、団粒孔隙構造と微生物の生息部位の関係解明に初めて成功しました(下図、Mitsunobu et al., 2024, Soil Biol Biochem)。
また団粒1粒ごとに生息する細菌の多様性、粒ごとの菌叢の類似性(機能的冗長性)、窒素循環を駆動する機能遺伝子の多様性などについても研究を進めています(Matsumura et al., 2025)。さらに、N2O還元微生物に最適な人工団粒をデザインし、農地からのN2O発生削減を目指す研究も進めています(dsoil.jp)。



